以前にも書いたことがありますが、私は倍数体育種にあまり興味を持っていません。嫌いなわけではなく志向していないだけです。
自然の懐にあるエビネの野性味が心の奥に深く横たわっていて、倍数体に求められがちな整った花型などにはあまり心が動かないのです。倍数体シンビジウムを思い起こさせる丸いコロコロした花弁は好みではありませんが、花弁がしっかりしていることは良いと思います。梅弁のニオイは自然種には見かけない珍しいもので、倍数体育種ではできそうなことですが、そういう領域にまで行こうと思わないだけです。ニオイ交配も自然種どうしのF1やF2が好きなんです。
巷では倍数体品種が多くなりましたが、だんだん目が慣れてきて、この後どういう展開が待っているのかなあと思うことがあります。流行はそれとして、かつてはコルヒチンを使って倍数体をつくろうとしたこともありますし、今も倍数体は栽培しています。交配することもいくらかありますが、倍数体の学術的なことは詳しく知りません。
以下の記述は個人的な感じで間違っているかもしれません。誤りがありましたらコメントでご教示いただければありがたいです。
これまで3倍体(3n)、4倍体(4n)の品種を交配に使ってみた結果ですが(♀×♂)、
①2n×3n=かなり発芽する種子が得られることがあるようですが、子はほとんどは2n?
②3n×2n=発芽する種子が得られにくい感じ。発芽してもいびつなものが多く育ちにくい
③4n×3n=やっていませんがいくらか発芽種子が得られるのでは? 子は2n or 3n?
④3n×4n=例が少ないですが受精がうまくいかず種子ができず不稔性が強かった
⑤2n×4n=発芽種子が得られやすいようで基本的に子は3nですが、2nも混じっている?
⑥4n×2n=発芽種子が得られやすいようで基本的に子は3nですが、2nも混じっている?
(かってな推測・感想)
・3倍体は減数分裂がうまくできないので、種子の不稔性が強く出るが、♂につかった場合(①)は♀の卵細胞に対して膨大な数の♂花粉の中に2倍体用花粉(1n)がいくらか含まれていて2n×2n交配となって種子ができる確率が高くなるのではないかと推測。逆に3倍体を♀にすると卵細胞の多くが3n由来の不稔性を持っていて種子できにくいのでは。しかしやってみると意外に種子が普通くらいに取れてよく発芽するものもある(本当に3倍体か?)。
・倍数体は多くの場合、生育が遅く2nに比べて到花年数が多く(2~3年)かかる。
・倍数体は葉や花弁が厚く花色が濃く感じられるものもあるが、必ずしも優良な花ばかりではない。
・実用的には3倍体に優良な花が育成されやすいと思うが、♀株としては育種に使いにくさがある。
・4倍体は必ずしも花は大きくなく(小さいものもあり)、硬くて素直に開花しにくく、花茎が伸びにくいなど観賞価値的には優れているとは思えない株が多くあり、3倍体育成の育種親としての活用が良いように感じている。
・交配から生まれる子は、♀親の性質を強く引き継ぐという話を聞いたことがあるが、真偽は検証していません(そういえばそのような、花型、香りは特にそうかなあ・・)。