キリシマエビネの原種は地味なものが多いが、紫青の色彩を持ち、他種との交雑によって子の色彩を幅広いものにする貴重な遺伝資源を持つと思われ、交雑種の青みを帯びた花色の発現に関係しているのではないかと思っ ています。ひょっとしたらニオイエビネを含め青紫色の発現にはキリシマエビネの影響があるかもしれません。もっと大切にされてよい原種と思います。
植物体がやや大型のものから小型のものまであり、通常、葉は2枚(時に3枚?)。細葉でややつやのあるものが多い。花色は白~薄紫で濃紫色の原種は見ない。含み咲きの個体も多い。距がまっすぐ上を向いて長く伸びる(下へ巻き込むものは交雑種の可能性)。舌は小さく白~淡紫。時に紅赤色。隆起線は3本で黄色を乗せることがある。中裂片と側裂片の間の切れ込みは浅いもの(深いものは交雑種の可能性)が多い。中裂片は短く、楔形で先端は尖る。香りのないものが多い。
あまり増えず、注目もされにくく、栽培株数は大幅に減少していると思われ、健全な優品は出物も少なく貴重と思います。品種によってはかなり育てにくいものがあり、栽培方法もあまり研究されておらず、徐々に枯らしているのではと心配しています。
かつてキリシマエビネとして登録された品種の中にはヒゼンあるいは微ヒゴ、サツマかなと思わせる品種もあるように思いますが、純度の高いキリシマエビネは目立たないひっそりした花のように思います。無銘品の優花?の多くも失われてしまったのではと思います。人の手に渡った野の花は、見つめてもらうことがなくなると廃れてしまうものです。
交配では純系セルフ、シブリング交配の発芽はよくありません。ニオイエビネと同様に繁殖が難しいです。種の保存を目指して交配しますが苦戦しています。
交配親としても使いにくいです。
ニオイエビネとの交配でできるスイショウはニオイエビネとは異質な香りで、あまり強く香らない株が多いように思います。
参考画像(いずれも自然種)
銘品 白妙
キリシマエビネの純白花として有名な品種で素晴らしいです
銘品 霧島
古い白花品種ですが年によって子房付け根にピンクが乗りわずかに色素を持っているよう?
無銘白花
やや大輪で紫の色素は見えない(純白?)力強い花。貴重なすばらしい株
銘品 鈴姫
紅舌花。充実すると紅がもっとよく出ます
無銘 紅舌花
典型的なキリシマエビネの形態を持つ株。やや小輪。葉はつやがあり細く長い