鉢植えは限られたスペースの中に閉ざされた特殊な環境下での栽培で、調子のよい地植え株と比べれば勢いが違いますが、管理を的確にしようとすれば鉢植えにすることになります。
鉢植えの土(植え砂)はこれでないといけないという配合はありません。水はけと水持ちのバランスを考え、自分の管理にあった配合にするということでしょう。また原材料の砂の採取地が遠いと価格が高くなりやすいので、安価で手に入りやすいものを使えばよいと思います。
現在使用している用土と配合割合(中小粒共通)
硬質鹿沼土:5.5割(ガーデンスタイル)
さつま土 :2.5割(中村産業)
日向土(ボラ):1割 (ひゅうが土販売)
ベラボン :1割(フジック)
パーライト:若干(無印:所沢植木鉢センター)

植え砂
粒の大きさにかなりばらつきがあります。鹿沼土はやや粒が小さいです。小さい白い粒はパーライトです。
粒の大きさ
・一番下にさつま土と日向土の大粒混合(混合割合1:1)を鉢土量全体の1割
・その上に硬質鹿沼土の大粒とさつま土中粒混合(混合割合1:1)を0.5割
(マグアンプK大粒を適宜(株の大きさ品種によって増減:10粒くらい入れる)
・その上に上記割合の中粒砂を入れマグアンプK大粒を適宜混和。7割
・その上に小粒砂を入れバルブ半分~1/3隠れる程度の浅植え。1.5割
・水苔にクリプトモス(Sサイズ)を1割程度混ぜてを表土の上に置く
留意点
・用土に表示されている粒の大きさは、同じ中粒でも土の種類やメーカーで大きく違うので混和
の際には注意が必要です。しかし粒径はそれほど神経質にそろえる必要はなく、上から下まで
全部中粒で植えても、中小粒混合でもあまり支障はなかったようでした。
・中粒の大きさ例:さつま土と日向土はほぼ同じ粒径ですが鹿沼土の中粒は粒が小さくさつま土
の小粒に近い。ベラボンは5Mサイズでよい。パーライトは細かいものは不可。
・使用に先立って十分に吸水させておくことは活着促進のために重要です。所定の混合を行った
のち用土を水洗いし、用土袋などに入れて水を満たしてブロックなどの上に2~3日置いてお
けば吸水します。水をかけるだけでは、なかなか土の芯まで吸水しにくいように思います。
用土の性質
・エビネは弱酸性の土壌を好むそうですが、用土の性質に触れてみたいと思います。
・鹿沼土は酸性(pH5.5くらい)で水持ちはやや良く、硬質であってもやや柔らかい。メーカー
によって品質に差があるので硬質で良質のものを使っています。エビネの植え込み材料として
は使いやすいです。より硬質の日光砂もいいですが入手しにくいので使っていません。
・さつま土は中性に近い弱酸性(pH6くらい)で水はけが良く、粒はしっかりしていて使いや
すい。東洋蘭にはよく使っています。
・日向土(ぼら)は中性に近い弱酸性(pH6くらい)で水はけがよくやや硬い。
・赤玉土は弱酸性で水持ちがよくやや柔らかい。品種によっては少量混合することがありますが
普通は使っていません。
・焼赤玉土は多孔質で硬く重い。高価な資材なのでカンラン、シュンラン には使いますが、あ
えてエビネに使う必要はないと思っています。
・砂類ではありませんがベラボン(あくぬき:pH6.2くらい)はヤシの実のチップで洋ランなどで
使用されています。エビネ用土としても水分の調整や通気などのバランスを保つ働きがある
と思っており1割程度入れています。
・パーライトは真珠岩を高温処理したもので、ごく軽く、通気や物理性保持の緩衝材として少し
入れることがあります。ゼオライトも入れることはありますが特別の効果は?
・水苔は酸性(pH5くらい)でニュージーランド産のあまり高級でない(長い苔は必要ないので安
いものを)ものを使っています。クリプトモスを1割混ぜて鉢の上に置いています。クリプト
モスはスギの皮を加工したもので静菌作用?があると聞きましたが効果はわかりません。
水苔は用土の急激な乾燥などを防ぎ、土壌環境の安定に役立つほか、弱った株の回復や独特な
生育促進効果 があるように感じています。特にニオイエビネは浅植えにして株元を水苔で軽
く保護するように植えています。小苗や根の傷んだ苗は水苔植え(肥料はやらない)にするの
がよいと思っており、砂植えとは潅水パターンが違い、乾かし過ぎると水をはじき吸水しなく
なるので注意がいります。
植替え
植替えは株の生育に合わせて通常2~3年に一度くらい(しかできない)、計画的に行い、ラベルに植替えの年月を記入しておきます。植替えは労力がかかりますが、作を決める大きな場面ですので極力丁寧に行います。時期は、新根がしっかりする秋口がよいと思っていますが、丁寧にやれば真夏以外ならやれますし、緊急を要するときは思い切ってやるべきです。株分けは極力株数を増やさない栽培をしているため、あまり行いません。特にニオイエビネはあまり株分けせず、力をためるようにしています。
・手順としては、まず鉢を開けて株を取り出し、ニオイエビネでは、株元、根(大切に)を水流
で水洗します。古いバルブの根、腐った根を整理して殺菌剤をスプレーし洗濯物のように陰干
しして、生乾きの状態で植えます。サツマや交配種などは根が丈夫なので、鉢から抜いて、砂
を落とさず古いくさったバルブ、根を簡単に除くくらいで一回り大きめの鉢にすっぽり植えて
も問題ないようです。
多忙で間に合わないときは1/3ほ ど上砂を除き、芽の位置が悪ければ株をずらし、 根元を水洗
した後、殺菌剤をスプレーして追肥(マグアンプ)を行い、新しい砂で埋め戻します。荒っぽ
いやり方ですが1~2年くらいは植替えを先延ばしできます。あくまで応急対策です。
・ニオイエビネはバルブが腐りやすく持ちが悪いことが多いですが、根張りがよくなって、バル
ブや葉が3年くらいしっかり残るようになると充実したよい株になり、本芸の花を咲かせるよ
うになります。
充実不足の株に咲いた花は色が冴えず、舌も貧弱で、良く咲いた花とは別種のようにしか咲き
ません。充実しても美しく持ち味を発揮して咲くのは数年に一度あるかないかで、この難しさ
が魅力でもあります。小苗は他のエビネに比べて抵抗力が弱いので手心が必要です。小分けせ
ず大きく充実させ、2芽化して株の存続を図ることが大切です。
・使用する鉢はできるだけ同じものを使用し、管理しやすくします。水切れがよく通気が取れる
ものなら何でもよいと思います。小苗は硬質ポリポットを使用しています。スリット鉢も試
しています。4号鉢以上はKUポットを使用しており、安くて管理しやすいです。
かつてはプラ菊鉢を使用していましたが、砂の量が多く必要なことと、あまり作がよくなかっ
たので今は使用していません。鉢はやや小さめのものを使うようにしています.
鉢
左から KUポット、硬質ポリポット、スリット鉢 鉢底ネットを使用しない鉢が省力的です