エビネは無肥料でも育ちますが、施肥の効果ははっきり出ると思います。昔から蘭に過肥は禁物といわれていますが、より大きく立派な株にしようとして、ついつい過ぎてしまいがちです。施肥量は株ごとの調子によって増減すべきでしょうが、それは手間がかか りすぎるのでついつい同じようにやってしまいます。
そのリスクを回避し、手抜きするためには少なめに、薄くしてやることにつきます。また、エビネは多肥に耐え、栽培書や経験談に書かれている肥料の量には相当ばらつきがあり、業者の栽培場でおそろしい量の施肥をしているのを見たことがあります。肥料を効かすだけ効かせてぎりぎりの強日照をとり、しっかり水を与えれば株の能力いっぱいの生長が達成できるかもしれません。
しかしアマチュアではそこまでいけば後は落ちるだけで、もはや株に余力がありません。いつも少し足りないくらいがよい状態なのだと思っています。空きっ腹の方がご飯がおいしくいただけ、腹八分が胃腸の調子にもよいと思います。
お金儲けの効率を目指す栽培なら最大化の方向もありましょうが、趣味の栽培ではリスクが大きすぎるように思います。特にニオイエビネの多肥栽培はうまくいけば施肥効果が大きいと思われますが、この点では極端なことを数多くやってみて、そのほとんどが失敗に終わった経験から、数年単位で考え、おとなしい余力を持たせた栽培を目指す方が株の持続のためによいと思っています。
ですから私の施肥量はかなり少ないと思いますし、立派に見えないので誰もほめてはくれませんがニオイエビネが増殖しにくく事故率が高いことを思えば、生き残りにはこの方がよいと思います。積極的に株分けをしないので、30年たっても1株のままで増えもせず、その間、すっぽ抜けを繰り返し、花も2~3回しか咲いたことがない株もあります。ニオイエビネの栽培は増やすより絶えさせないことだと思っています。
マグアンプK(大粒)を基肥に使っていますが、植替え作業の中で扱いやすく、肥当たりなどで失敗しにくいと思っています。この肥料を植え砂の表面に置き肥としてたくさんばらまいておられる方がいますが、あまりよい方法ではないと思います。この肥料は水溶性成分も含まれていますが、成分の多くは根から出る酸によって、く溶性成分が溶けて安定的に効くようにできているので、根のないところへばらまいても(水溶性成分が早めに溶けて即効的には効くでしょうし、根が土の表面に露出しているようなら効くと思いますが)高価な肥料の使い方としては非効率ではないかと思っています。根が伸びていく先の土中に入れておく使い方が基本と思います。2年くらい肥効が持続するようですが、窒素分の溶出は栽培条件で差があると思いますので2年目からは生育状況を見て液肥で補うようにしています。
肥料
後ろ側が液肥、前が固形肥料。このほかにもいくらかあります。
そのほかで使う肥料としては、液肥としてハイポネックス原液(青い液)、ハイポネックスハイグレード開花促進(N:0)などを時期に応じて薄い濃度(指示の1/2以上)で使います。だらだらはやりません。その方が吸収しやすくよく効くように思います。ペンタガーデンは高い肥料なのであまり使いませんが日照不足の時に使用することがあります(寒蘭に与えたら葉が伸びすぎてしまいました)。置き肥はグリーンキングなどを5月末、9月各1回ずつ、5号鉢で5~6粒ほど置く(株の大きさ、生育によって増減)程度です。5月の方がやや多めです。小苗には与えません。
活力剤はいろいろ試しましたが、多用は費用対効果が低く、通常に育っているのならあまり必要を感じません。若干いいのかなというくらいです 。小苗には使用しますが薄くしてまじない程度です。
リキダスを昨年から実験的に使っています。カルシウムの吸収がよくなるためか葉がしっかりするような気がしますが確証はありません。
葉面散布剤はアミノメリット(黄 )を秋に使うことがありますが、これも気休め程度です(野菜用に使っています)。葉面散布は根からの吸収が十分できないときには効果が期待できると思いますが、通常の生育なら根から吸収させる方が吸収量が多く、効果が高いと思います。
展開中の新葉への葉面散布(肥料、活力剤)は、葉が柔らかく効果より障害が出やすいのでやりません。葉先に黒い点や黒変が出ることがあります。特にニオイエビネは弱いように思います。
肥料には有効期限の表示がありませんが、保管の仕方によっては肥料効果が落ちてしまうことも考えられますので管理には気をつけます。