高橋勝雄「日本エビネ花譜」
丹念に撮影された写真と丁寧な解説文に感心させられました。
1984年の発刊で多くの写真はその前の数年間に撮影されており、ほぼすべて自然種のものと思われます。特にVOL3のニオイエビネ・コオズの項は目を見張りました。
掲載写真は74枚のうち、ニオイ1、ニオイ系13、コオズ系5、コオズ55。断然コオズが多いです。当時はコオズの人気が高かったからかもしれません。
高橋氏は形態的な特徴から、かなり厳密にニオイエビネをとらえられておられ、ジエビネ的な形が見られる点を示してニオイ系、コオズ系などに区分されています。私は
この本の記述をすっかり忘れてしまっていたのですが、小生がこのブログの中で書いたもの(昨年8/12「ニオイエビネ、コオズ、ジエビネの外観的ちがい」)とよく似ており驚きました。本の購入当時、その記述を納得していたのかもしれませんね。
本の中でたった1枚だけニオイエビネ(系がつかず)と紹介されている写真(勝手にここに載せたらダメでしょうね)があり、その説明にはニオイエビネの典型的な特徴として、①花弁が藤色に似た桃紫色 ②反転咲きで花弁のふちが後方へめくれる ③側花弁は萼片に比べ細い ④舌の中裂片尖る ⑤側裂片は斜め下へ伸びなで肩に見える ⑥距は細く子房より長く尖端は上向く ⑦花はヒヤシンス状に密集咲、と記載されており、そのとおりだと思います。
8/12のブログの中の原種型ニオイエビネ(
8701=ヤフオクにも出品しました)もほぼこの特徴に合致していると思います。
今ならニオイエビネと記載されるであろう優品株のほとんどが、ここではニオイエビネ系(交雑の可能性ありとして)と表現されているように思われます。純度の高いニオイエビネの自生が多かったといわれる御蔵島であっても、わずかに交雑が感じられる自然種はかなりあったのかもしれません。
以前から、多くの愛好者が願う梅弁、濃色といった優品の条件は、ニオイエビネの原種の形とは相容れないところがあり、ニオイエビネ独自の見方がいるように思っていました。
この本でニオイエビネの原点に立ち返ってみることができて、ちょっとうれしく思いました。
私自身、ニオイエビネへの関心は高いですが、ニオイエビネの血が濃い見栄えのするコオズやバラエティ豊かなコオズはすばらしい可能性を持ったジャンルと思っています。
花を愛でて楽しく栽培するのなら、この分野は多くの方々に喜び、癒やしを与えてくれると思っています。これについてはまた機会があればつぶやいてみたいと思います。
原種型ニオイエビネ(8701)