病害虫防除は多くの栽培者が悩む問題ですが、基本から外れ、我流がまかり通っている分野でもあります。私も大した知識はありませんので、専門の方たちにもお聞きしたことなどを書いておきます。法に違反することを書くのはNGということで・・・
エビネ の主な病害虫
病気
軟腐病:すっぽ抜けや葉の湿ったような褐変など。細菌性の病気なので抗生剤を使用。すっぽ抜けは風通しが悪いと発生しやすく、植え替え時に傷がついたりしても感染しやすくなります。軟腐病だけでなく、灰色かび病など他の病気感染が原因の場合もあります。薬剤で防ぎきれるものではなく、発見も遅れがちで大株がバッタリ倒れたりする怖い病気です。ニオイエビネでの発生は多く(小苗は弱く、品種による差があります)致命傷になることがあります。早く発見できた時はミニルーターで(虫歯治療のように)患部を取り除いて消毒し、乾燥させる緊急外科的な手術?もします。大半は手遅れで発見され、株の存亡の危機に至ることも多いです。予防としては、風通し良く、浅植えで水苔で保護、春先の薬剤散布くらいでしょうか。バルブの中が腐っていくので表面的な防除では止まりにくいです。
軟腐病様症状
後ろのバルブから腐りが進んでいる。その後ろのバルブに腐りが広がっていることも多い
灰色かび病:湿度が高く、やや低温で発生しやすい病気ですが、いろいろな病徴を示し、すっぽ抜けにも関係しているようです。
ウイルス病:別の項で書きます。
害虫など
アブラムシ:花につきやすいですが、防虫ネットをきっちり張って、服への付着や入口の開閉時に持ち込まないように注意(これが油断大敵)すればある程度は防げますが、絶対ではありません。防虫ネットは通常1mm目ですがアブラムシやダニはすり抜けられる目合です。防虫ネットは確かに効果が高いと思われますが完全に遮断できるようなものではありません。0.4mm目合のネットもあるそうですが通風が悪く、夏は高温になりやすいようで、実用向きではないようです。アブラムシには殺虫剤がよく効きます(簡単に済ますのならエアゾールタイプの家庭用殺虫剤が便利ですが、絶対に至近距離から噴射しないこと。ヤケます)。
ダニ:これが一番強敵。ここ2~3年、手抜き栽培で痛い目にあっています。乾燥、高温で発生しやすいので潅水時に葉(裏)にもよく水をかける。ダニ剤で防除しますが大発生すると抑えきれません。発生初期に葉裏をしっかり防除し、同じ薬剤は連用せず、1剤1年1回とし,異なる作用の薬剤ローテーションにより抵抗性をつけないことと、卵、幼虫、成虫に応じた薬剤を使う必要があります。浸透性のある長期に効く薬剤はないように思います。多忙な時に気づかずにあっという間に拡がってしまいます。広がらないうちに初期防除が重要です。
ダニ被害葉1
表側から見たところ。表面にはダニはほとんどいない(8月)
ダニ被害葉2
裏側から見たところ。白っぽくかすれたようになっている
ダニ被害葉3
葉裏のの拡大画像で黒や茶色の点に見えるのがダニ
カイガラムシ:幼虫時期(5~6月) に防除すれば効果があります。風通しが悪いと葉元に発生しやすいく、発生させると防除が厄介です。
ナメクジ:葉をかじります。夜に捕殺するか多いときは誘引薬剤を使用します。
病害虫防除の基本は、栽培環境を整えて発生を未然に防ぐことが最も大きな予防効果があります。例えば、防虫ネットを張ることや、病害虫の集まりやすい周辺の植物、野菜の管理、雑草の防除、あるいは栽培環境をよくして健全に強く育て、抵抗力をつけることなどです。
ニオイエビネの増殖が難しい理由は、株が分かれにくいことに加えて、病気に対する罹病性が高い(品種差大)ことが大きな原因と思います。