ウイルス病との出会い
農学部の学生時代、花卉や野菜のウイルス病について、基礎的な知識や実物を目にすることがありました。ランは専門外でしたが罹病株らしきものもしばしば見ていました。
また植物ウイルス研究で有名な平井篤造先生の集中講義をお聞きしたこともウイルス病に関心を持つきっかけとなりました。
私はウイルス病は専門外ですが、病徴をみてウイルス病が疑われる株への警戒心は養われていきました。ただ、その正確な診断は今なお難しいと思っています。
エビネのウイルス病についての私の覚えを書き留めておきます。正確ではないかもしれませんのでご了解願います。
エビネが罹病するウイルス(「ランのウイルス病」記載内容からまとめ)
ウイルス名 病徴発現 虫媒伝染 備考
シンビジウムモザイクウイルス(CymMV) 葉、花? 虫媒伝染しない 発生多
オドントグロッサムリングスポットウイルス(ORSV) 葉、花 虫媒伝染しない 発生多
エビネ微斑モザイクウイルス(CalMMV) 葉(微)花 アブラムシ 発生やや多い
ランえそ斑紋ウイルス(OFV)) 葉 オンシツヒメハダニ
クローバー葉脈黄化ウイルス(CIYVV)) 葉、花 アブラムシ
キュウリモザイクウイルス(CMV) 葉、花 アブラムシ 多くの植物に感染
インゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYVV)) 葉(微) アブラムシ
カブモザイクウイルス(TuMV) 葉、花 アブラムシ
・すべてのウイルスは汁液接触で感染し、虫媒伝染するものとしないものがある。
・栽培株のウイルス病ではCymMVとORSVの罹病が多く、重複感染もあり。病原性の持続期間
が長い。
これら2つのウイルスはアブラムシではなく汁液の付着侵入によって伝染する(意外
に知られていないことです)。
株分け時の器具(はさみ、作業台)などへの汁液付着や潅水した鉢からの排水などで伝染する。
伝染力が強く、盲点になりやすい根からも感染しやすいので注意。
・ウイルス病の蔓延は、この排水の不適切な処理と、株分け時の器具、手指汚染が大きな原因で
あったのではないかと考えています。
・エビネ微斑モザイクウイルスも発生が多いといわれています。
・ウイルス病は花に症状が出るものは目立ちますが、葉に( 特に新葉)出るものが多いようです。
・葉の病徴は見逃しやすく、花には顕著には出にくいように思われます。無病であってほしいと
思う気持ちが、余計に見つけられにくくしているように思います。
・大規模に罹病が見られた園ではウイルス病防止策に大きな欠陥があったものと推測されます。
・アブラムシによる感染を防ぐには防虫ネットを隙間なく張ること。周辺の樹木、野菜、雑草の
アブラムシ防除(密度を低下させる)も必要。ちょうど4月中旬の開花期に有翅アブラムシが
発生・飛来し、感染源になると思います。発生しやすい樹木(カエデなど)を観察していると発
生がよくわかります(=警戒警報)。発生初期に樹木へオルトランなどを散布し飛来を防ぎます。
有翅アブラムシ
4月中旬、カエデに発生したアブラムシ。有翅が1匹確認できる