光の条件は自然条件とその土地・建物などの状況で大きく変わります。
自然条件としては季節によって太陽の高さが大きく変化(南中高度:夏至約80°、冬至約30°)します。当然、栽培場所の光と影の部分が大きく変わることになります。また明るさは光源からの距離の2乗に反比例します。光源が太陽ですから透明度が高ければあまり関係ないのかもしれませんが遮光している場合は、屋根が低いところと高いところでいくらか差があります。
私の蘭亭は家屋の西側にあり、エビネ小屋は南北に長く約20㎡、屋根は片屋根で畜産波板(熱を持ちにくいが透光性は低い)とポリカ透明波板を組み合わせて張り、ポリカ部分の屋根裏に遮光調整のため不織布を重ね張りにして散乱光にしています。夏は屋根の上部に遮光ネットを張ります。小屋の周囲は防虫ネットなどをきっちり張ってあります。棚を設置してウイル ス伝染防止のため、水が下に落ちるようにエキスパンドメタルの網の上に鉢を並べています。
さらに小屋の外側通路に沿った光の少ない(日陰で暗そうに見えますが5000Luxくらいあります)棚に寒蘭などを置いています。光の多いところ(昼には20000LUX以上あります)に春蘭類を置いています。
朝は家の陰で小屋に陽の差すのが遅く、小屋内の光環境は場所によってかなり差があります。西側はカシの垣根になっていますが、しっかり西日が当たるので簾をつるし、黒寒冷紗を張っています。日照条件的にはやや厳しい環境ですが、照度計で細かく計測して光条件を評価し、それに合わせて鉢を並べています。弱い光でも長く当たっていればよいし、朝方の良い光(植物が目覚め生育に良い)はわずかでも取り入れたいと思います。逆に西日は消耗が大きくなりやすく、ないよりはましかもしれませんが、あまり光としては評価しません。しかし秋は貴重な光源です。照度×時間と季節的な変化を考えて鉢の位置を設定します。鉢の位置は品種の差や苗の大きさなどを考慮し、作期中はできるだけ動かさず、植物を光環境に順応させるようにしています。場所を動かすことは様々なストレスを与えることになると思っています。
これまでの経験上の目安では、野外の直射光は真夏で10~12万Luxで、家の北側の直射のないところでも日中は意外に明るく、約7000Luxありました。エビネは半日くらい日照が取れるところでは4000~6000Luxくらいでよく、サツマやヤマト系は光に強く、ニオイは弱めがよいと感じています。強い品種でも10000Luxが長時間続くと葉焼けする品種がでてきます。特に展葉期のニオイエビネは葉焼けしやすい品種があるので、ずっと少な目でもよいように思います。ニオイエビネはかつて相当暗く(2500~3000Lux)していましたが、花はそこそこ咲いていました。
葉焼けは強光+高温+無風でひどくなります。葉温が高くなることが問題で通風は重要と思います。よほどの強光でない限りすぐには症状が出ませんが、しばらくして多くは葉先から葉焼け症状が広がってきます。病気と勘違いされていることもあると思いますが、こんな時の薬剤散布は薬害が発生しやすく最悪です。
葉焼け症状
葉焼け後しばらくして出てくる症状?品種によって差が大きい
冬は棚下に収納し、休眠状態なので光はごく弱いですが、生育や開花にはあまり影響しないように思います。棚下は気温が低く安定しており、春が近づけばできるだけ早く日照をとって春を感じさせるように工夫しています。
照度計
季節ごと(夏至、秋分当時、春分など)、時間ごとに栽培場所ごとの照度をきっちり測り記録します。
光条件は植物のエネルギー源となる光合成を管理することであり、栽培環境のうち、基本となる重要な要素ですので、これを適切に設定するために手間をかけるのは仕方ありません。照度計は必須で通販で安く売っています。データをとることが栽培管理を改善するための第一歩だと思います。
光合成は湿度と関連があり、好適な湿度条件下(ある程度湿度がある状態)で光合成能力が向上するようです。